Posted by: tomura
in blog on 2010 3月, 26
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今回は、前回の予告通り手術についてのお話です。
幸いなことに?うちの組合は症例数が多いせいか、いろんな手術にあたらせてもらっています。
しかしいつも思うのですが、何度手術をしてもおなかを開けるまでは怖いのです。
産業動物の世界は術前に充分な診断ができないので、頼りになるのは視診、触診、
聴診あとは血液検査ぐらいです。ですから手術と決めてから開けるまでは自分の診断が
正しいのか心配になります。
今回紹介する症例は、悩みに悩んで手術をした牛でした。
平成22年1月6日生 黒毛和種 ♂
平成22年2月16日 下痢をして元気がないとのことで診療依頼がありました。
初診時 元気・食欲なく 腹囲やや膨満し腹部に力が入った状態で変に硬い
腹腔内に明確なping音は認めず
脱水があったため輸液をしながら、様子を観察していると、わずかな疝痛症状
内科的治療で完治するような気配はなく、自分の中で「手術でしょ、いやもう少し内科的に
様子を、しかし手遅れになってからじゃ遅いよ」と散々迷ったあげく、
自分:「手術したほうがいいと思うんです」
畜主:「う~ん、点滴で治らんかな?」
自分:「このまま点滴続けても、死んじゃうと思います。・・たぶん・・・」
この症例は、病名が絞れなかったので強く説得できませんでした。
畜主:「手術すれば治る?」
自分:「おなかを開けないと何とも言えないけど、このまま点滴を続けるだけよりは、
治る可能性はあると思います。・・たぶん・・・」
畜主:「・・・・・・約10分」
奥さん:「このままじゃ死ぬって先生が言うんだから手術してもらえばえーとよ。
まこち肝が切れんもんじゃ!」
自分:(いいぞー!婆ちゃん、もっと言ってー!)
畜主:「じゃーな、切ってもらおうか!」
自分:(小さくガッツポーズ)
手術室のある本所へ向かう車の中で、今度は「本当に切れば治るの?大丈夫なの?
畜主の希望通り輸液続けてやっぱり駄目でしたね、で済ませればいいんじゃないの?」などマイナスな
自分の問いかけが襲ってきます。
そんな心の葛藤もメスが入るまで続き、今回は開けた瞬間に「開けてよかったー」となりました。
フィブリンの析出とミルクの匂いが腹腔内に漂い、どこか破れている様子です。

喜んでいる場合ではなく、原因を探すと・・・ありました!
第四胃幽門部の穿孔でした。

これで原因がはっきりしたので、あとは本来の形に戻すべく全力を出すのみです。
穿孔部の壊死組織を取り除き

縫合後に内容物が漏れないよう、また通過障害を起こさない管腔の広さを確保する様にしっかり縫合して

腹膜炎を起こさないようにフィブリンの除去と腹腔内洗浄を念入りにして

終了!

手術に踏み切ってよかったという安堵感と極度の緊張から解放された心地よい疲労感、
そして指示しなくても手足のように動いてくれる素晴らしいスタッフ(S藤v,Y本v,O町v)に
恵まれて満足のいく手術ができたという気持ちが交錯し、幸せな気分に浸れました。
ドレーンを入れてないので傷口が腫れましたが、牛は元気に回復してくれました。

よかった よかった。